注文住宅を検討している方のほとんどが、「地震に強い建物を建てたい!」という要望を持っているはずです。
熊本地震の記憶はまだ鮮明という方も多いのではないでしょうか。
あの地震で着目されたのが「直下率」です。
ある程度の耐震性能を持つ新しい建物が倒壊したため調査をしたところ、要因の1つとして直下率の低さが指摘され話題となりました。
では、直下率とはどのようなものなのでしょうか。
今回は柱の直下率について、わかりやすく解説します。
また、直下率以外にも様々な要因によって、耐震性が下がってしまうこともあります。
今回はそちらについても軽く説明していますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。
建物の強度に関係する柱の直下率とは
では、建物の強度に関係する柱の直下率とはどのようなものなのでしょうか。
直下率とは、2階の柱の真下に1階の柱がある割合のことです。
2階と1階の柱の位置がそろっていると、建物のバランスが良くなり揺れに耐える力が強くなります。
例えばおもちゃの家を作るときのことを考えてみましょう。
縦長のブロックで柱を、厚紙で床を作ることにします。
ブロックを上と下で同じ位置に建てれば、床は安定するのが想像つきますよね。
逆に上と下でバラバラの位置にブロックを建ててしまうと、紙は2階のブロックの位置によってバランスが保てなくなり倒れてしまいます。
このように、注文住宅で自由に間取りを決められる場合であっても、上下階の柱の位置はしっかりと考慮して設計する必要があるのです。
直下率の計算方法は?
直下率は以下のように計算ができます。
直下率=2階の柱の真下に1階の柱がある本数/2階の柱の本数×100%
例えば、2階の柱が50本、2階の柱の真下に1階の柱が30本ある場合、直下率は次のように計算できます。
30本/50本×100%=60%
つまり直下率は60%であり、全体の60%の柱が1・2階で揃っていることがわかります。
この直下率の数値は強度を判定するのに大切なポイントです。
お客様が自分で計算する機会は中々ないとは思いますが、どのような仕組みで計算されているかを知っておくといいでしょう。
直下率は建築基準法などで明確な基準があるの?
直下率に対する明確な基準は、建築基準法では定められていません。
ただし、通し柱に関しては建築基準法の基準があります。
通し柱とは、1・2階をつないでいる1本の柱のことです。
直下率で説明していた1・2階の柱はそれぞれの階で別の柱でもいいのですが、通し柱の場合は柱がつながっていることを指します。
通し柱の基準は次の3つです。
・隅柱を通し柱にすること
・隅柱に準ずる構造上重要な柱は通し柱にすること
・隅柱を通し柱としない場合は接合部を同等以上の耐力を有するよう補強すること
隅柱とは建物の四隅にある柱のことです。
上記の項目を守っていれば、建築基準法的には直下率が何%でもOKということになります。
柱の直下率は何%が望ましいと言われている?
建築基準法で定められていないとは言っても、建物の四隅以外の柱が上下階ですべてバラバラでは建物の強度は保てません。
柱の直下率は50%以上が目安と言われています。
おおよそ半分の柱が上下階で同じ位置にあればいいだろうということです。
ちなみに拓建ホームは、柱の直下率は60%以上の建物を基準としています。
お客様の間取りの要望を取り入れるだけでなく、目安を大きく上回る直下率で建物の安定とバランスを考えて設計しています。
耐震性を高めるために!柱の直下率以外に考えるべきポイント
冒頭でもお伝えしましたが、直下率を高めただけでは建物の強度を上げることはできません。
その他にも様々な観点から構造を検討し、建物を設計していく必要があります。
直下率以外に検討すべきポイントを3つお伝えします。
・耐力壁の量
・壁量のバランス
・建物の形状
それぞれ簡単にわかりやすく説明していきます。
耐力壁の量
まずは、耐力壁の量です。
耐力壁とは通常の壁と比べて高い耐震性を発揮する壁のことです。
木造軸組工法では筋交いを柱の中に入れて耐震性を高めますが、最近は筋交いよりも耐震性の高い耐力壁を施工することが多くなりました。
もちろん筋交いでもいいのですが強度が耐力壁より弱まる分、多くの量を入れなければなりません。
耐力壁の量は、地震力に耐え得る量を入れる必要があります。
耐力壁は耐えられる強さが決められているので、規定の地震力を超える分だけの長さをつければいいという単純な計算で量は算出できます。
開放的な空間を作れば作るほど、壁量が減ってしまいますので耐力壁を入れられる場所も限られてきてしまいます。
そのため、開放的な空間の周りには、一定量をバランスよく耐力壁を配置する必要があるのです。
壁量のバランス
耐力壁は量だけを考えておけば良いわけではありません。
もっと大切なのが、建物に対する壁量のバランスです。
ある一方向に壁がまとまってしまっていると、1階と2階でバランスが取れずにそこから崩れてしまいます。
また、壁を平面として考えたときに、XY方向のどちらかの向きが明らかに少ない場合も、バランスの悪い建物になってしまいます。
地震は多方向から揺れが来ますので、バランスが悪い場所が要因となって倒壊につながるのです。
かなり大まかに説明していますが、実際にはもっと様々な観点から壁量バランスを考えて設計をしてみます。
興味がある方はぜひ当社のスタッフに話を聞いてみてください。
建物の形状
建物の形状も耐震性に大きく影響します。
形状とは、建物を見たときに四角なのか凹凸があるのかなどです。
お分かりかと思いますが、凹凸のある建物と比べて、長方形などの四角い建物の方が耐震性は高くなります。
なぜなら、建物が1つの面体になっているので、揺れを全体で受けて分散させることができるからです。
多少の凹凸があったとしてもそれぞれが長方形で区切ることができれば、耐震性は保ちやすいです。
対して、長方形に区切ることができない形の凸凹した建物は耐震性が下がります。
なぜなら、各ブロックがきれいな長方形になっていないので、揺れを受け止めることができないからです。
様々な方向からの揺れで建物にねじれが起こってしまったり、どこか1ヵ所に衝撃が集中してしまうこともあります。
注文住宅の場合は、ついついこだわった形状にしたいと考えがちです。
しかし、自ら耐震性を弱めていることになりますので、設計士と相談しながらバランスの取れた形状の建物を設計しましょう。
また、平面だけでなく、上下階の形状も非常に大切です。
よくあるパターンが、2階が1階よりも大きくせり出している建物です。
キューブ型の建物ではデザイン性を高めるために良く採用されています。
2階を屋根代わりに駐車場を作る場合なども、上下階の形状のバランスはかなり悪くなります。
揺れによって2階の荷重に1階部分が耐えられなくなってしまうと、倒壊する危険性もありますこちらも設計士との綿密な打ち合わせが必要です。
まとめ
直下率は建物の強度を左右する大切な要因の1つです。
自由設計の場合は、お客様の間取りの要望を優先させるために、直下率を下げてしまう住宅会社もあります。
しかし、拓建ホームは直下率60%という基準があるので、お客様の要望を取り入れながら耐震性も確保できるような間取りを提案しています。
お気に入りの間取りのマイホームができても、地震で倒壊してしまっては意味がありません。
耐震性もしっかり考えた家づくりをして、もしもの時に安心できるようなマイホームにしましょう。